院長コラム
ここでは私が、歯科医療を取り巻く現在の状況や、さまざまな問題点等について、テーマごとに、自分なりの考えや普段感じていること、意見等を思いつくままに、述べさせていただきます。いいかえれば私の「独り言」と思ってお読み下さい。
■ 2011/07/06 いわゆる「銀歯」について(再掲)
いわゆる「銀歯」とは、文字通り銀色をした金属でできた、詰め物やかぶせ物のことを言いますが、主に水銀を含んだ「アマルガム」や「銀合金」、「ニッケルクロム合金」(発がん物質)、あるいは「金銀パラジウム合金」を指すことが多いようです。いいかえれば貴金属の反対の「卑金属」です。「自由診療と保険診療の違い」の中で、私が、「保険診療=他人に対して行う診療」、「自由診療=自分(すなわち歯科医自身)が受けたいと思う、あるいは自分の愛する家族や身内に対して行う診療」という他の先生のたとえを引用いたしましたが、具体的には、他にもたくさんあるのですが、いわゆるこの「銀歯」を入れる治療が代表的な例です。
アメリカの歯科医に対するあるアンケート調査結果です。あなたがもし、自分がかぶせ物を入れなければならなくなったとしたら何を入れたいですか、というアンケートの問いかけに対して、ほとんどの歯科医師が「金合金」もしくは「セラミック系の材料」と回答しており、いわゆる「銀歯」を答えた歯科医は一人もいませんでした。これは彼らが見栄を張りたいから選ぶわけでもなければ、お金があるから選ぶわけでもありません。医学的、科学的に理にかなっているからなのです。参考までに「銀歯」は英語で、
「ジャパニーズクラウン」="Japanese crown"(世界中で日本人だけしか入れないかぶせ物)
と蔑称されています。もちろん私自身も、そういう治療が必要になった場合でも、銀歯は入れたくありません。
本来なら、「自分(や家族)が受けたくない治療は他人にも行わない」、また、「自分が受けたいと思う治療を他人にも行う」のが医療を行う者、ないしは歯科医師のあるべき姿であると私は考えます。医学的、倫理的に見ても到底理解できない、あるいは説明できる人がいないにもかかわらずなぜ、日本人の口の中にはいまだにたくさんの銀歯が入っていたり、あるいは銀歯が入れられるのでしょうか?
一番の理由は、それが保険診療のルールだからなのです。それを守ってやむを得ず、銀歯を入れている(入れてきた)(=自分や家族が受けたくない治療を、ルールだからという理由で、やむを得ず他人に行っている)、これが日本のほとんどの歯科医師の実情ではないでしょうか。もう一つあるとすれば、私もそうですが、私たち歯科医師の側から自由診療の、特に費用やお金にかかわる話を切り出すのが嫌であるがために、患者さんにとって一番いいと思う治療法や材料(=歯科医師自身や家族が受けたいと思う診療)があるのを知っていながら、やむを得ず銀歯を入れてしまうケースです。決して好き好んで銀歯を入れる歯科医師など誰もいない、と同じ歯科医師である私も信じたいのですが・・・。
あとは患者さんにとって利点があるとすれば、安いということだけでしょう。
私たち歯科医師は、銀歯が医学的、科学的にまったく根拠(エヴィデンスevidence)のない材料、治療法であり、世界中のどの論文を探しても正当性を示したものなどないことを知っています。それどころか金属アレルギー(今歯科大学病院の中で、「金属アレルギー外来」を新設したところもあります)の原因となったり、生体親和性も悪く、歯と接着しないため、将来的に高い確率で二次う蝕をきたして、より患者さんにとって負担の多い、リスクを伴う再治療となってしまうか、やがては大切なご自分の歯をなくしてしまう可能性すら、はらんでいることも知っています。歯科医師の技術力、上手い下手を言う以前の問題です。
さらに知っていただきたい事項として、「銀歯」のうちの金銀パラジウム合金が保険の詰め物として認められたのは、1960年、戦後間もない頃からです。当時、国は「銅亜鉛合金」を保険診療の中に組み込もうとしましたが、あまりにも生体に害のある金属だったため日本補綴歯科学会の「歯科用金属規格委員会」は総医療費や日本の経済力からみて、貴金属に替わる安価な代用金属として開発された「12%金銀パラジウム合金」をもって許容限界とし、出来るだけ早い時期に「金合金」へ移行すべきであることを委員会報告書で発表しました。しかし時は過ぎ、いつの間にかそのことは忘れ去られ、現代に至っているのです。すなわち、今皆さん方のお口の中に入っている
保険の「銀歯」は、「代用金属」
(=本来口の中に入れるべきでなはい「代用品」)
なのです。その「12%金銀パラジウム合金」ですが、金12% パラジウム20% 銀50% 銅16% その他2%(亜鉛 インジウム、イリジウム等)を含んでいます。このうちのパラジウムは、金の耐摩耗性、銀の耐蝕性、耐硫化性という欠点を補うために使用されていますが、リンパ球幼若化テストという金属アレルギー検査では、約半数の人に陽性反応が出ます。ドイツやスウェーデンでは、保健省が歯科業界に対して、「幼児及び妊婦に、銅を含有するパラジウム合金と、水銀・銀アマルガム合金を使用しない」という勧告を行ないました。ドイツなどの歯科医療先進国では、パラジウムが体に与える悪影響を考慮して、パラジウムフリー(パラジウムを含まない、パラジウム0%)の金属を使うことを強く推奨しており、外国製の日本向けの歯科金属のパンフレットでも、「この金属はパラジウムを含みません」ということをわざわざ謳っているほど、パラジウムは身体に有害であると広く認識されています。近年こうしたパラジウムの有害性が認識されてきたからかどうかは定かではないのですが、あまり大きな声では申し上げられませんけれども、日本歯科医師会の中でも、将来的にいわゆる「銀歯」を保険から外そうとする動きがあることも、知っておかれるとよろしいでしょう。
ですから私たち歯科医師自身やその家族の中に、銀歯をわざわざ選んで、あるいは自ら望んで入れる人はいないわけです。私も歯学部学生時代に、講義で銀歯の作り方や入れ方は教わりましたが、入れていいとは言われていませんし、入れる必要性や適応症についても、一切教わっていません。
あくまでも銀歯を入れる入れないは患者さんが決めていただくことです。私たち歯科医師は、お決めいただいたことに対してはベストを尽くしますが、こうした事情もよくご理解、ご承知いただいた上で、お決めいただくのがよろしいでしょう。
■ 2011/1/30 医療費控除について -歯科に関する領収証について-
そろそろ確定申告の時期が近づいて参りました。私どもも毎年この時期は何かと忙しくなるわけですが、皆さんは医療費控除のうちで、歯科に関する領収証についてどの位ご存じでしょうか?私どもが思い当たるものを、医療費控除の対象となるものと、対象とならないものに分けて、大まかですが挙げておきましたので参考にして下さい。ただし私は税務の専門家ではないため責任が持てませんので、正確な情報については最寄りの税務署や税理士さんにご確認下さい。
対象となるもの:
1)むし歯や歯周病の治療でもらった領収証
保険診療、自由診療にかかわらず対象になります。
2)歯のかみ合わせが悪い場合の歯列矯正
ストレートライン、キッズラインによる治療でももちろん対象になります。ただし、美容目的のみの歯列矯正は対象となりませんので注意が必要です。
3)医師からの指示で購入した医薬品等(松葉杖や歯ブラシの購入費なども含む) 医師からの指示というのがポイントです。院内で購入したものであれば対象になります。
4)治療通院にかかる交通費
電車、バスならば手帳につけておくか、乗車券等の発行証明書をもらうと確実です。タクシーは領収書もしくはレシートをもらって下さい。
対象とならないもの:
1)ホワイトニング、病気の治療を伴わない歯のクリーニング
2)市販で購入した歯ブラシや口腔ケア用品
3)車での通院時のガソリン代、駐車場代
■ 2010/6/30 インビザラインの適応症例について
世界で最も有名なマウスピース矯正「インビザライン」で治すことができるケース(適応症例)について、皆さんはどの程度ご存知でしょうか?ちなみにこのことは、ストレートライン以外の、他社製マウスピース矯正(クリアアライナー、アクアシステム、オペラグラス等)についても同様のことが言えますので、是非知っておかれたほうが良いでしょう。
本来、インビザラインは適応症例のみに行うべきものであり、適応症例と診断された方に対しては、開始から終了までインビザラインのみで治すのが正しい方法
です。「補助矯正」と称する従来のブラケット・ワイヤーによる矯
正、あるいは床矯正は必要でないと、担当医が明言できることが大前提です。裏を返せば、
いわゆる「補助矯正」が必要なケースは、インビザラインの適応症例ではありません。
したがって、インビザラインの適応症例はきわめて限定されており、以下に述べる全ての条件を満たしている必要がある、と述べている歯科医師もいらっしゃいますので参考までに挙げておきます。
(1)顎関節症の症状がない
(2)咬み合わせに問題がない
(3)むし歯がない
(4)いわゆる「銀歯」も「差し歯」もない
(5)歯周病にかかっていない
(6)神経を取る治療(抜髄)をされた歯がない
(7)抜歯ケースではない
(8)顎の位置がずれていない(顎偏位症がない)
つまり、インビザラインを使用して良い結果が得られるのは、
以前に削って治すような歯の治療を受けたことがほとんど、あるいは全くなく、他の人と比べて歯並びはそれほど悪い状態ではないけれども、ハリウッドスターなみの完璧な歯並びにしたい人
ということになるわけです。これらの(私たちからみてもかなり厳しい?)条件をクリアーできるような、適応症例の方にとっては、インビザラインの恩恵を受けられるにちがいありませんから、検討する、あるいはストレートラインよりも高額になるであろう治療費を払ってでも、治療を受ける価値はあるのではないでしょうか。
しかし残念なことに、日本では、一般的に審美性の改善を目的として歯列矯正を希望される方は、上記の適応症例よりももっと歯並びが悪い方になるでしょうから、適応症例を探して見つけ出すことさえ難しいと思われます。
その上、インビザラインは一日のマウスピース装着時間が20時間以上と、通常タイプのストレートラインよりも長く、患者さんにとってハードルが高いため、治療期間が予定よりもかかってしまうケースも多く見られるため、メリットが少ないものと思われます。20時間以上装着できる方でしたら、当院ではストレートライン2By-1が適応になり、こちらの方ですと平均約1年~1年半で治療が終了してしまいます。従って、
当院では、インビザラインに代表される、ストレートライン以外の他社製マウスピース矯正につきましては、ストレートラインに比べてマウスピースの精度も劣るなど、優位な点が見当たらないことから、導入を見送っております。



